Case Study

活用事例

活用事例[詳細]

CASE-11 収量底上げをめざし詳細データを活用
広島県/JA広島北部千代田地域法人協議会

地域全体の収量底上げをめざし、水稲栽培の詳細データをZ-GISに活用

~17法人が集まる千代田地域法人協議会のZ-GIS活用術~

JA広島北部は、2005年4月1日にJA広島千代田とJAたかたが合併し、安芸高田市と山県郡北広島町の千代田地区・大朝地区を管轄エリアとして発足しました。同JAの千代田支店がある千代田地域は、標高約270m~400mに位置する中山問地域です。圃場の大区画化が難しく、1圃場当たり20a-30aの小規模な耕地が広がっています。主要品目は水稲で、その他にも小麦、ミニトマト、キャベツ等が栽培されています。千代田地域では農業に根差した伝統芸能が盛んで、毎年6月に行われる豊作祈願の行事「壬生(みぶ)の花田植(はなtこうえ)」や、五穀豊穣、厄災の払拭、豊作へのお礼を神に祈る郷土芸能「神楽(かぐら)」が、人々に親しまれています。

  • JA広島北部千代田支店とJAグリーン

経営•栽培に関する情報交換の場として協議会を設立

千代田地域法人協議会(以下、協議会)は、地域農業の継続発展をめざす農業法人がお互いの経営栽培に関する情報交換を通じて法人の経営向上につなげる目的で設立されました。現在、協議会は、l7法人と千代田支店(事務局)で構成されています。各法人の合計圃場数は約2600枚、合計作付面積は約380haで、千代田地域の作付総面積(112 7.92ha)の約30%を占めています(2020年)。協議会は2か月に1回開催されており、生産者(産地)と消費者(食卓)を繋ぐことをコンセプトに栽培される、JAの「結び米」に関する協議や、先進地、地域内の視察等様々な取り組みを行っています。また、各法人は、肥料・農薬の効果試験や生育調査、土壌分析等を行う展示圃場を設けており、協議会はこれらの試験調査結果等を共有協議する場にもなっています。

協議会が持つ詳細な記録をZ-GISに

千代田地域はかつて、法人によって水稲の収量が大きく異なっていました。そこで、地域全体の収量の底上げを図り、千代田米のブランドを確立するため、協議会の中で各法人の収量、栽培品種、栽培履歴、購入資材、生育状況等の詳細な情報を紙にまとめ、共有しました。加えて、協議会の活動として地域内の収量の良い法人の栽培方法を勉強し、収量の底上げに向けて互いに協議して改善を図るようになりました。
この成果を受けて千代田支店では、協議会が把握する法人毎の詳細な記録に、全農の「農家手取り最大化」の取り組みで紹介されたZ-GISを組み合わせることで、より高度な圃場管理と営農指導が可能になると考えました。2019年8月、このことを千代田支店が協議会に提案し、Z-GISの導入が決まりました。

  • Z-GISを操作する益田指導員

Z-GISで記録の活用場面がさらに広がる

千代田支店はZ-GISの導入にあたって、各法人が水稲栽培に関する様々な情報を入力するためのExcelシートを作成しました。協議会で詳細に記録している内容をベースに、基礎情報(圃場番号、法人名、地番、農地面積、作物等)や作業日(播種、耕起、代掻き、田植え、防除等)、使用した農薬や肥料の銘柄や使用量等、30項目以上を用意しました。各法人は2020年3月(水稲作開始直前)までにZ-GISに登録した圃場(以下、ポリコン)の位置基礎情報を入力し、7月末までに肥料・水稲除草剤関連の項目を入力します。加えて12月4日までに、収量、その他の情報を入力しました。一方、千代田支店はこれらの入力情報のとりまとめや入力作業に対する法人へのサポートに注力しました。
干代田支店は、これらの詳細な記録を、法人に対する巡回指導(生育状況、収量の増加•減少の原因追及等)に活用しようと考えています。その他、法人に対する肥料・農薬等の生産資材や新資材の提案、次年度の栽培に向けた検討等、あらゆる場面での活用を想定しています。
千代田支店の益田指導員は、Z-GISについて「Excelで自由に管理項目を設定できるため活用の幅が広がる点や、ラベルを圃場の上に表示させた地図の印刷ができる点が気に入っています」と高く評価しています。

  • Z-GISに取り組む田坂副支店長(左)、益田指導員(右)

人工衛星リモートセンシングを活用して水稲の生育診顧を実施

千代田支店は2020年6月、全農と連携し、協議会の中の3法人を対象に国際航業株式会社の人工衛星リモートセンシングサービス「天晴れ(あっぱれ)」を活用して、水稲の生育診断を実施しました。天晴れを使って幼穂形成期の生育状態を把握することにより、生育状態が悪い場所には追肥や次年度の基肥の増量を行い、生育が良い場所には倒伏軽減剤を施用する等、対策を講じることができます。その結果、法人が考えていた水稲の生育状況と天睛れの分析データは、整合性が取れていることがわかり、自分たちの見立てが間達っていなかったことを再認識できました。

  • センシングデータ

  • 展示圃場で生育調査

Z-GISで作成したマップを基に可変施肥

千代田支店は2020年10月、Z-GIS上で作成した施肥マップを株式会社IHIアグリテック製ブロードキャスター(GPSナビキャスタ)にデータを転送し、可変散布する実証試験を行いました。この技術は面積が1haを超える圃場でもほぼ正確な散布が可能で、条件の良い圃場では10km/h以上で散布することができました。協力いただいた農業法人は「以前は作業中に施肥量を変えられないため低速で作業する必要がありましたが、この方法により速度を気にせす作業できるようになりました」と評価しています。
益田指導員は、今後請負防除(無人ヘリ・ドローン等)や麦大豆の刈取りの受委託作業にもZ-GISを活用したいと考えています。貝体的には、圃場番号や面積でポリゴンを色分けして画面の地図印刷等を行い、対象圃場の選定や作業進捗の確認に活用することを検討しています。また、協議会における情報共有の効率化を図るため、親子機能の導入も視野に入れており、今後さらにZ-GISの活用場面が広がりそうです。

  • Z-GISで作成した施肥マップで可変施肥

インタビュー動画