Case Study

活用事例

活用事例[詳細]

CASE-5 耕作放棄地を減らし、次世代に農地を残すために
熊本県/JA本渡五和

耕作放棄地を減らし、次世代に農地を残すために

~Z-GISは若い世代にバトンを渡す格好のツール~

JA本渡五和(ほんどいつわ)(代表理事組合長 湯貫秋男)は熊本県天草の中央に位置しています。畜産、果樹栽培が盛んですが、土地の気候を生かした早場米の生産、畜産と連携したWCS(稲発酵粗飼料)栽培など水田農業も基幹となっています。農地を次世代に引き継ぐために、営農組織への農地集約、農作業の受委託が進められる中、圃場管理のツールとしてZ-GISが導入されています。

  • 営農組織へのZ-GIS導入を進めるTACの山下さん

営農組織の設立を機にZ-GISを導入

JA本渡五和管内では高齢化による耕作放棄地の増加を食い止めるために、営農組織の設立が進められてきました。また、2016年にはJA自己改革の一環で、地域営農組織が相互に連携し、単体では困難な諸問題を解決し地域農業の活性化を図る事を目的に、「JA本渡五和営農組織連絡協議会」が設立され、現在は8つの営農組織で構成されています。一方、当JAは「ICTを活用した生産技術向上」に取り組んでおり、営農指導員や経済渉外員がタブレット端末を導入し、組合員の生産技術のサポートを行っています。
このようは状況の中、TACであり、営農経済渉外員の山下清弥さんは、営農組織の圃場管理にZ-GISが役立つのではないかと考え、営農組織連絡協議会向けの研修会を実施しました。集まった営農組織のメンバーを前に、山下さんらは、「圃場の状態の見える化」による「管理作業の効率化」や「メンバー入れ替え時のスムーズな引き継ぎ」などZ-GISの導入効果を熱心に説きました。その結果、複数の営農組織がZ-GISの導入に興味を示し、現在(2019年7月)は3営農組織が導入しています。ここでは圃場条件が異なる2つの営農組織での活用状況について紹介します。

点在する900筆の農地管理に活用
農事組合法人 宮地岳営農組合

(農)宮地岳営農組合は天草下島の中央部、周囲を500m級の山に囲まれた平均標高110mの盆地にあります。温暖な天草では一番の寒冷地で、積雪もあります。天草市の中心からは17km離れており世帯数は240戸ほどで、ピーク時には1900人であった人口が、いまや500人を割るまでになっています。
宮地岳営農組合は2002年に設立され、現在、組合員は150人で、管理する農地は100ha余りとなっています。農地の8割は基盤整備されていますが、区画は狭く農地の筆数は900を超えています。また、転作で導入している作目は飼料用米、大豆のほか、ナタネやソバ、レタスなど多岐にわたります。それに加え、農地は山を挟んで水系ごとに分かれており、どこでどのような作目が、どれだけ、いつ栽培されたかを掌握するのは容易ではない状況でした。繁忙期にはアルバイトを雇っていますが、作業すべき農地の位置が分からないということも珍しくありませんでした。まさに圃場管理の効率化が急務の中、Z-GISの導入を決断したのです。
現在、営農組合ではトラクターやコンバインなど、経営に必要な機械や設備はほぼ整備されており、常時3~4人の組合員がオペレーターとして作業に従事しています。「個々の農家では限界があるが、共同で農業に取り組むことで、さまざまな夢を実現できる」と山﨑三代喜組合長はおっしゃっています。
今後の課題は営農組合をどうやって次の世代に引き継ぐかだといいます。営農組合を継続していくには「若い人に組合に入ってもらえるような魅力ある農業にしたい」と考える山﨑組合長。そして、Z-GISがその有力なツールの一つになると期待されています。

  • 「Z-GISは簡単にデータ入力できる」と好評

  • Z-GISで作成、拡大コピーした地図の前で農地の管理状況について説明する組合長の山﨑さん

Z-GISで紙地図管理の煩雑さから開放
農事組合法人 楠浦営農組合

(農)楠浦営農組合が管理する圃場は海沿いの海抜ゼロメートルに近い干拓地にあり、かつては区画が狭くばらばらで農道もなく、給排水もままならないような冠水常襲地でした。当組合の前身である営農組合は、この条件の悪い水田の圃場整備とその後の作業受託を目的に設立されました。
2009年に農事組合法人に組織替えして、作業受託から利用権設定による賃貸借に切り替えました。現在、地権者は130人ほどで、約27haの利用権を設定しており、これは楠浦町の水田面積の半分ほどにあたります。当組合では水稲、大麦、WCS(稲発酵粗飼料)、高菜などを栽培しています。圃場は干拓地であったため、地下水位が高く畑作には不向きとされていましたが、農研機構が開発した地下水位制御システム「FOEAS」(フォアス)を導入することにより、麦のほか高菜や広島菜などが栽培できるようになりました。
こうした賃貸借の管理、圃場整備の情報および転作作物の管理は、それまで紙の地図で行っていましたが、管理の煩雑さに限界を感じ、システムの導入を検討していました。当初は、他社の地図情報による圃場管理システムを試験的に使っていたものの、「入力とオペレーター作業に時間がかかり、使い勝手が悪い」ため、本導入をためらっていました。
「そんな折、TACから提案を受けたZ-GISは、エクセルで簡単に入力でき、利用価格も安いので使うことにしたのです」と語るのは、同法人の鬼塚猛清代表理事(JA本渡五和営農組織連絡協議会会長)。現在は台帳面積、水張り面積、早期米と晩期米の区別と品種、裏作の作物などをデータ化して管理し、効率的な営農管理をすすめています。
鬼塚さんの願いは、先祖から引き継いだ農地を守ることにあります。そのためには「地元の若い人が年間を通じて働き、給料を出せるような経営を確立しなければならない」と考えており、Z-GISがその一翼を担ってくれるのでは、と期待をかけています。

  • 「営農組合にしたことで、耕作放棄地が大区画の麦畑に生ま れ変わりました」と鬼塚代表理事

  • Z-GISに期待をかける鬼塚さん(左)と会計担当の吉田さん(右)